日本のテレビ放送が本格的に始まったのは昭和28年。西暦でいえば1953年ですから67年前のことです。当時のテレビは今では考えられないほどの贅沢品、サラリーマンの月給が3万円といわれた時代に1台17万円以上もしました。しかもカラーではなくモノクロ。サイズも14型とかですから、ノートパソコンを少し大きくしたほどの大きさしかありませんでした。それでも当時の人々は大興奮していたのです。

テレビ番組の多くはアメリカ製だった

昭和のテレビ番組、特に昭和30年代といえば、アメリカ製テレビ番組の黄金時代。というよりその頃の日本のテレビ事情といえばNHKにしろ民放各局にしろやっと放送をはじめたばかり。

番組づくりのノウハウも乏しく、すべては手探りの時代でした。そんなテレビ局の悩みを救ったのが1941年にテレビ放送を開始した先進国アメリカのテレビ番組。

これを吹き替えで放送しようというアイディアです。そのせいでしょうか。当時のお年寄りの中にはアメリカ人も日本語を話すんだと勘違いをする人も少なくなかったそうです。

また当時はテレビの仕組みがわからず、後ろに回って人がいないか確認したり、あの箱の中には小さな人間が入っているとマジメに信じ込んでいる人もいたそうです。そんなバカなというエピソードですが、これ事実なんです。

 

西部劇、探偵、犬や馬、医者、ホームドラマ、アニメ…テレビがいろんなアメリカを見せてくれた

アンディ・ウィリアムスショーやミッチと歌おうなどの音楽番組もありましたが、圧倒的に多かったのがドラマです。そのジャンルがまたバラエティに富んでいたため娯楽の少なかった当時の人々から幅広い支持を得ていたのです。

当時の男の子たちが夢中になったのは、馬に乗ったガンマンが活躍する西部劇。若き日のクリント・イーストウッドが出演していたローハイド、スティーブマックィーン主演の拳銃無宿、ボナンザ、ローン・レンジャー、テキサス決死隊などが人気でした。

「ローハイド」

サンセット77、ハワイアン・アイ、サーフサイド6などの私立探偵ジャンルも日本にはない軽いタッチとスピード感のある展開が大人気。とくにドラマに登場する車やファッション、陽気なライフスタイルなどは若者たちのあこがれを刺激したのです。

「サーフサイド6」

動物の登場するドラマも子どもたちの人気でした。名犬ラッシー、名犬リンチンチン、名犬ロンドンはタイトル通り犬が主人公?当時飼われていた犬たちコリー犬はラッシー、シェパードならリンチンなどと呼ばれていたといいますから、全国的にそんな認知のされ方だったんですね。

今からは考えられませんが馬がメインキャラクターのドラマもひとつのジャンルとして強力なポジションを得ていました。名馬フリッカ、走れチェス、そして馬がしゃべるという奇想天外なミスターエドなどがその代表です。

「ミスター・エド」

まだまだあります。コンバットやギャラントメンなどの戦争ドラマ。ベン・ケーシー、ドクターキルディアなど医者が主人公のドラマ。スーパーマン、宇宙大作戦(スター・トレック)、アウターリミッツ、ミステリーゾーン(トワイライトゾーン)、タイムトンネルなどのSF。

「ベン・ケーシー」

まだ若いメディアだったテレビは、アメリカ製テレビ番組のおかげでお手軽なエンターテイメントの主役への駆け上っていったのです。この影響は当時の人々、なかでも影響を受けやすい子どもたちに良くも悪くもアメリカという存在を意識させずにはおきませんでした。

 

テレビの中にあったのは幻想のアメリカだった

希望はあってもまだまだ貧しかった昭和中期の日本。テレビに映るアメリカ。とくにホームドラマの中のアメリカ人の暮らしは夢の世界のように見えました。

パパは何でも知っている、うちのママは世界一、パパ大好き、ドビーの青春、
パティ・デュークショー。そこには煌くばかりのアメリカがありました。ちなみにホームドラマという呼び方は日本の造語、アメリカではシュチエーションコメディ(シットコム)とよばれています。

「パパは何でも知っている」
タバコ会社とのタイアップだったんですね。今からはとても考えられません。

靴をはいたまま入っていけるリビング、緑の芝生、大きな冷蔵庫にはたっぷりのアイスクリームや巨大な牛乳瓶、自家用車、芝刈り機、地下室、ガレージ、一人に一室の子供部屋、制服のない中学校、子ども専用のテレビ、ステレオ、掃除機…。

当時の日本人にコンプレックスに近いほどの衝撃と憧れを与えたドラマの中のアメリカ。本当のところはアメリカ人にとってもある種、理想のしかも白人中流層の特殊なライフスタイル。

現実とは大きく異る幻想の世界だったのです。当時の人々がそのことに気づくのはもう少し先。1970年代に入ってからのことでした。

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