愛知県犬山市の明治村に現存する旧帝国ホテルの建築で有名なアメリカの建築家フランク・ロイド・ライト。日本建築をスタンダーナイズされた空間という言葉で表現した彼は畳こそ日本の合理精神の現れだと信じていました。

旧帝国ホテル正面玄関

日本の良さを再発見、畳は時代遅れなんかじゃない。


彼が興味を示したのは和室に使われる畳という単位。畳の基本的な大きさは1畳(じょう)が3尺×6尺(910mm×1820mm)。和室はこの1畳とその半分の大きさの半畳サイズを組み合わせることで平面的な空間を構成しているのです。住宅建築では設計の基本となる単位をモジュールと呼んでいます。日本家屋では古くから畳の短い方(3尺=910mm)に相当する尺モジュールが使われてきました。この正方形の尺モジュールを2つ並べたものが畳というわけです。

 

人間のサイズに合わせて進化してきた尺という単位。

例えば階段の幅は(3尺)、和式クローゼットである押入れの幅は一間(6尺)、襖や障子などの間仕切りは畳の大きさと同様となっていました。それだけではありません。かつてはタンスなどの家具もこの尺モジュールに合わせたサイズで作られていました。現代では日本人の体格も身長も大きくなりましたが、和室が生活の基本だった当時はこの尺モジュールが合理的なサイズだったのです。

本当は合理的なサイズと暮らしの日本文化

ライトが高く評価したスタンダーナイズされた空間とは尺モジュールを基本とした空間のあり方。先ほどあげた襖や障子、タンスなど建具や家具の基本サイズが決まっているので、生産効率も高くなるわけです。完成形の規格が統一基準として決まっていれば部材などの生産工程も自ずと合理的なものになります。また引っ越しなどの際にも何畳という基準を知るだけで部屋に入る家具の数やレイアウトにも一種のルールが生まれ、引っ越しはしたけれど家具が大きすぎて入らなかったなどという心配もありません。これはいってみればシンプルな使いやすさを追求した引き算の美学。日常生活の中にも合理性と機能性を調和させた日本文化本来の姿を見ることができます。

つなげて広々。日本の空間思想を反映する続き部屋の和室

現代では畳敷きの部屋イコール和室と考えるのが当たり前となっていますが、これは本来の和室のあり方とはかなり異なる位置づけといってもいいでしょう。田舎の家などは和室がいくつもある場合が少なくありません。例えば6畳の和室が2間続きで並んだレイアウトはパーティションである襖を開け放てばそのまま12帖の広々とした空間として利用が可能です。同様に3間、4間と続き部屋の襖をあけて繋げるだけでいつもはプライベートな空間も、大人数の人々が集う集会の場へと変化します。この多目的用途に対応した自由性は和室の特長でもあるのです。

あの名建築のヒントになったのは平等院鳳凰堂

平等院鳳凰堂

日本建築の特性として開放性と自然という視点を忘れてはいけません。和室の障子の向こうには縁側があり、その先には庭が広がっています。このように庭を住空間のデザインとして取り込むことで、室内空間にも広がりが生まれるのです。ここで再びフランク・ロイド・ライトのエピソードを。彼がシカゴ万博の際に設計した日本館はライトの設計スタイルの原点と呼ばれています。その元になった建物は、10円硬貨の裏側にも描かれている平等院鳳凰堂。ライトの代名詞でもある落水荘にも間仕切や縁側、軒によって連続性を持つ日本建築の平面的な様式が取り入れられています。

日本の建築文化が息づくライト作品に出会える場所

  • 帝国ホテル正面玄関(博物館明治村) 住所 : 愛知県犬山市字内山1番地hp : http://www.meijimura.com

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